Hello,new morning

連続ですがはるまこです。
やっぱりリア充です。
そしてバカップルです。
でもあの二人だから許されますよね…w






羊水にも似た温かいまどろみの中。
夢なのか、それとも夢と現実の間なのか。
頬に何か柔らかいものが触れる感覚がした。
重い瞼を開けてみると、目の前に栗色の線が流れた。
ぼやけていた輪郭が徐々にシャープになってくる。
「おはよ、真」
春香がボクに向かって手を伸ばしていた。
顔の左に向かっているところを見ると頬でもつついていたのだろうか。
寝起きだからか、ボクの頭は混乱していた。
何故目の前に春香がいるのか、何故二人とも服を着ていないのか
けれどすぐに昨晩の出来事を思い出して合点が行った。
昨日の夜、ボクたちは一つになった。
春香に出会ってよかったと心底感じた時間だった。
春香の表情、声、感触
全てを鮮明に思い出す。
と共に顔から火が出るかと思うくらい恥ずかしくなった。
言葉を出そうと思っても口の中で変な音になるだけ。
喋るのって、こんなに難しかったっけ。
「…おはよう」
かなりの時間を要してボクは返事をした。
春香はボクの様子を観察して笑いをこらえているようだった。
からかわれたようでちょっとムッとしたけど、春香だから許してしまう。


それにしても
朝日をバックに横になる春香は、何というのだろうか。
ボクが詩人とかならきっともっとふさわしい表現ができるのだろうけど、あいにくそうではないので陳腐な言葉しか出てこない。
…天使かと思った。
人を見て息を呑むなんて初めてだ。


体勢を変えないままボクは春香を見つめる。
「春香、ずっと起きてたの?」
春香は頷いた。
半ば枕に顔を埋めているから、ちょっと上目遣いになっている。
「ずっとって訳じゃないけど、ちょっとだけね」
「起こしてくれてもよかったのに」
「真の寝顔可愛かったんだもん」
「……もう」
こういう恥ずかしいことを自然に言えるところが春香の凄いところだ。
言われるこっちの方が照れてしまう。

「ねえ春香」
「何?」
「その、抱きしめてもいい?」
春香はぷっと息を噴き出した。
「今さら照れてどうするの」
「べ、別にいいだろそんなの」
ボクは春香ほど開き直っていないのだ。
余程おかしかったのか春香はひとしきりクスクスと笑う。
そっとボクに向かって手を広げる。
「はい、真」
そんなに強い光が当たっているわけでもないのに、春香の姿は輝いていて眩しいくらいだった。
ゆっくりと距離を詰める。
春香の両脇の下に腕を潜らせて、背中に触れる。
そのままこちらへ身体を引き寄せた。
春香の口から甘い吐息が漏れた。
身体は折れそうなほど細い。
でもただ細いというわけじゃなくて、女の子らしい膨らみもくびれもちゃんとある。
本人は体重がどうとか気にしてるけどそんな必要は全くないと思う。
ボクはありのままの春香が好きだから。
肌は温めたミルクのような優しい色をしている。
どこか懐かしくて、安心する色。
指で感触を確かめる。
絹の滑らかを持っていて指の腹に吸いつくようだ。
マシュマロのような弾力の奥にはしっかりと芯があり、ボクの手をやんわりと押し返してくる。
肩に春香の息がかかる。
彼女が天使だとしたら、これは天使のささやきだろうか。
こんなに美しくて可愛い女の子がボクのものだなんて。
神様に会って確認したいくらいだ。
なんて、ポエムみたいなことを思ってみる。
「春香」
ボクの呼びかけに首を傾けた。
ほんの少しだけ潤んだように見える、その瞳。
何時間でも見続けられる。
「幸せだよ」
春香の瞳が揺れた気がした。
虚を突かれたようだが笑って返す。
「私も幸せ」
それはボクにとって、生クリームよりも甘美な響きだった。
弱い電流が全身をめぐる。
「春香ぁっ!」
「きゃあ!?」
我慢できなくなって春香を勢いよく抱きしめなおす。
春香の体勢が崩れてベッドから落ちそうになった。
「ちょっと真、危ないって!」
「ごめんごめん。でも春香が可愛すぎるのがいけない」
「何よそれ〜」
そう言いあってボクたちは笑った。
こんなに満ち足りた気分で朝を迎えるなんて、春香と出会う前は考えもしなかった。
笑いが治まった後、お互いの顔をいじくる。
髪を引っ張ってみたり、頬を摘まんでみたり。
意味なんてないけど。
髪に触れようとした春香の手をやんわりと払う。
顔を覗き込んでそっと口づける。
世間で言うおはようのキス、ということになるのだろうか。
「んっ」
色んな感情が混ざり合った、不思議な味のキス。
今までしたキスのどれとも違っていた。
唇を離した後に言う言葉は決まっていた。
多分、春香も同じ。




『ねえ、大好き』