大人の果実

お久しぶりです!
こっちに上げるのは二ヶ月ぶりですね><
エロいの書いてたりとか、色々あって…;
あ、18禁のはこっちに上げませんので、読みたい方はpixivで検索してみてくださいね。
さて、今回はひびまこです!
短いですが、お楽しみいただければと思います。







「……酸っぱい……」
口に含んだ途端、思わず口をついた。
横では響が不服そうに目を細めている。
そんな顔をされても、本音なのだからやむを得ない。
「何でだよー。美味しいだろ?シークワーサージュース」
「うーん、まあ、飲めなくはないけど……」
ボクは手の中にある缶を見つめた。
泡が弾けた分かりやすいスパークリングの絵柄と、今にも飛び出しそうな濃緑色の果実が写っている。
時期のずれたお盆休暇を取っていた響が、沖縄土産として買ってきたジュースだ。
あずささんや律子たちが美味しいと言って飲んでいたから、ボクも手に取ってみたのだが。
「何ていうか、未体験の味なんだよね。苦味があって酸っぱいっていうのはほかの食べ物でもあまりないと思うし」
レモンほど酸味がきつい訳ではない。
だがグレープフルーツほど甘味が滲み出てこない。
どちらかと言うとライムに近いのだろうか。
シークワーサーのお酒があると聞いたことがあるが、なるほど、確かに大人の味かもしれない。
「この苦味が癖になってくるんさー。苦いのが苦手だなんて、真って意外と子供っぽいんだな」
「別にそんなことないよ。コーヒーだって飲めるし」
ただコーヒーとシークワーサーの苦味が異質なだけだ。
果実特有の青臭さ。
「何でこの美味しさが分からないかなあ」
何事か呟きながら、ボクが飲み残したジュースを響は事も無げに胃に落としていく。
飲み慣れているとこうも違うものなのだろうか。
味覚は人によって差異があると分かってはいても、ボクとそう変わらない歳の友人がボクの知らない美味しさを知っているというのは、何というか――もどかしい。
響だけの楽しさに興じているようで、羨ましいというか、妬ましいというか。
それは、常にスポットライトの当たる位置にいる彼女を見つめる、日頃の僕にも似ていて。
少し背伸びすれば、ボクも届くだろうか。
「ちょっと、頑張ってみようかな」
ボクの独り言に響がお、と身を乗り出した。
「その意気だぞ真〜。何をやるにもまず挑戦!」
言葉を額面通りに受け取る響に苦笑する。
この底抜けの明るさが響の魅力だ。
響、君は何も知らなくていい。
苦味も喜びも、全部味わってて。
ボクが君に追いつけばいいだけの話なのだから。
「響、ジュース貸して」
「はい」
手を伸ばすだけで、簡単に触れられるというのに。
二度目に口にしたそれは


やっぱり、苦かった。