猛暑的視線

一時間SS書きましたー!

テーマは「夏日」「夏雲」「夏ばて」「夏服」。
夏日を選んでみました。








アスファルトも焦がすような太陽の下
雑誌のグラビアの仕事を終えたあずさと貴音は事務所への帰路についていた。
「はい、貴音ちゃん」
「ありがとうございます」
あずさはコンビニで買ったパピコを折り、一方を貴音に渡す。
口を切り勢いよく啜るとコーヒーの味が広がった。
貴音のほうを見て見ると封を開けずにしげしげと眺めている。
「どうしたの?」
「いえ…このようなあいすは見た事がないので…どうすれば良いのでしょうか」
貴音の言葉にあずさはあらあら、と頬を緩ませる。
こういったところでも彼女は世間知らずの片鱗を見せる。
「ここの口を切って吸って飲むのよ。ほら」
あずさが手本を見せるようにパピコを口にする。
「なるほど。興味深いですね」
貴音は納得したようで、見よう見まねでゆっくりと食べ始めた。



梅雨入りが例年より早かったせいか、今年は暑さが早足でやって来た。
気象庁は記録的猛暑と言っているが毎シーズン聞いているような気もする。
天気予報では今日も真夏日ということだ。
「貴音ちゃんは、暑いのは平気なの?」
並んでパピコを啜りながら、あずさは聞いてみる。
貴音は一旦口を放して頷く。
「ええ。以前住んでいたところは夏場の熱気が籠るところでしたので」
「そう。大変だったんじゃない?」
「確かに夏は毎回酷暑でしたが、それなりに知恵を回して乗り切りました」
「へえ〜。じゃあ今度、その知恵を教えてちょうだいね」
「勿論です」
やがて二人とも食べ終え、道端のダストシュートへごみを捨てた。
今停まっている信号を渡れば、事務所が見えてくる。
早く入ってクーラーで涼みたいものだ。
「ふう〜。それにしても暑いわね〜」
自身を仰ぐように手で風を送るあずさ。
「あずさは熱気が苦手なのですか?」
「そうね。昔から暑がりだから」
そう言うあずさの首筋から一滴の汗が流れる。
貴音の視線が引き寄せられる。
汗ばんだ身体、うっすらと上気した肌、透けそうで透けない下着のライン
じっくりとあずさを見てみると普段とは違う色気に満ちていた。
視線に気づいたのか、あずさが貴音を見やる。
「どうしたの?」
「いえ…何でもありません。あずさ、着きましたよ」
じっと見つめる彼女からやんわりと目を逸らす。
そうこうしている間に、事務所の前まで来ていた。
クーラーの効いている部屋に入れるからか、階段を上がるあずさの足音がどことなく嬉しそうだ。
「貴音ちゃん、明日も同じスタジオで撮影があるらしいから、頑張りましょうね〜」
「ええ、そうですね」






明日は今日よりすこしだけ遠回りしようか、と
貴音は胸の内で思うのだった。