それを繋がりと言えるなら

1時間SS参加しました。

テーマは「チャット」「メール」「マフラー」「リボン」。
マフラーをチョイスしました。









「あーあ、また」
ため息交じりの真の言葉は空しく虚空に消えていった。
一日の営業が終わり、765プロに戻った彼女の目に飛び込んできたのは、熟睡する美希の姿だった。
それ自体は不思議なことではない。
美希の昼寝好きは765プロだけでなくファンの間でも有名だ。
いつでもどこでも眠れることは彼女の特性と言っていい。
しかし今回はいつもとは様子が違っていた。
美希は靴もコートも脱がずにその体をソファに投げ出していた。
マフラーや手袋さえも身につけたままである。
「(よっぽど疲れてたのかな)」
確か彼女は朝からラジオの公録、新曲のレコーディングと立て続けに仕事が入っていたはずだ。
普段やる気を出さない美希が良く頑張ったと思う。
「真クンが応援してくれるなら、ミキいっぱい頑張るの!」と言ってくれていた。
美希がそう言ってくれるのと、彼女が頑張ってくれるのは真にとっても非常に嬉しいことだ。
「でもこのままはさすがにまずいかな。…よいしょっ」
美希の体を横向きにする。
器用に手袋を取り、コートをゆっくりと脱がしていく。
コートの下は暖かそうなセーターだった。
脱がしたコートを上半身にふわりとかける。
更にマフラーに手を伸ばしたが――




「あ、このマフラー…」
真の手が止まる。
美希が首に巻いている、茶色とピンクのチェックのマフラー。
色遣いと加減が絶妙で愛らしい。
「(ボクがあげたやつだ)」
そう、実はこれは1週間前に真が美希にプレゼントしたものなのだ。



東京では相変わらず極寒の日が続いているというのに、美希はマフラーをつけなかった。
本人曰く「首がムズムズするから嫌い」だそうだ。
しかし美希自身首元の寒さを必死に耐えていたらしい。
見かねた真がダメもとで選んだマフラーを渡してみると、意外や美希は大喜びだった。
「真クンが選んでくれたのならミキ使うよ」と終始笑顔だった。



「(ホントに使ってくれてたんだ)」
くすり、と笑いが漏れる。
金色の柔らかい前髪をそっと撫でる。
「ありがとう、美希」
すると、それに呼応するかのように美希の頬がピクリと動いた。
「ん〜……」
眠気を含んだ美希の声。
ゆっくり開く瞳に映るように、真は美希の顔を覗き込んだ。
「おはよう、美希。…って、もう夜だけど」
「あ、真クンおはようなの!」
真の顔を見るなり、美希はソファから跳ね起きる。
眠気も吹っ飛んだとばかりにニコニコと頬を緩ませる。
「そういえばこのマフラー使ってくれてたんだね。ありがとう」
「当たり前だよ。ミキにとってこれは特別なものだもん」
愛おしそうに美希はマフラーを握り締める。
その表情に真の胸がドキリと高鳴る。
顔を朱色に染めた美希の顔は例えようもなく可愛かった。
美希が顔をあげる。
「ね、真クン」
「ん?」
「おはようのキス、してよ」
真は驚いたようだがすぐに顔をほころばせた。
そして美希に顔を寄せる。
「うん、おはよう」









だってこれは
ミキと真クンとの『繋がり』だから