いつかあなたに

久しぶりにはるまこ書いてみました。
どうもこの二人はリア充っぽくなりますねw
爆発…いや、幸せになれ!






ぱっと目を覚ますと、テレビが音と映像を垂れ流していた。
どうやら電源を消さずに寝ていたらしい。
身体がぽかぽかと温かい。
炬燵に潜っていたから当たり前か、と思う。
リモコンのボタンを押す。
小さな静電気の音を鳴らして、画面が静寂へと戻る。
イモ虫のような動きで上体を起こす。
いつの間にか炬燵の魔力に引き寄せられていた。
頭がぼーっとしているのはのぼせているからだろうか。



曖昧な意識の中で、彼女の顔を思い出した気がした。
そう考えると、春香の顔がカッと熱くなった。
今度は炬燵のせいではない。
彼女のせいだ。
真の――せいだ。





何がきっかけかは春香自身よく分からない。
ただ今では、自然と目線で真の姿を追いかけているし、近くにいるとドキドキする。
最近は雑誌を見てたら高頻度で真が近づいてくるということが判明した。
彼女の斜め顔をちらっと盗み見たりしている。
形のいい唇を見ているとキスしやすそうだなあとか、どんな感触なんだろうとか、そんなことまで考えてしまう。
ああ、全く。
本当におかしくなっている。
頬に手をやると、熱を帯びていた。
「(もう…私ったら変だなあ…)」




リビングを離れて、寝室へ。
ピンクを基調とした愛らしい部屋。
春香はファンヒーターのスイッチを入れ、ベッドに腰掛ける。
学習机の一角に、黒いリストバンドが置いてあった。
丁寧に扱われていて汚れひとつない。
春香の宝物のひとつだ。
初めてのオーディションの際に真がプレゼントしてくれたものなのだ。
極度の緊張状態にあった春香に手渡してくれた。
「このリストバンド、ボクが初オーディションの時につけてたんだ。ボクの思いを目一杯込めておいたよ。
春香、一生懸命やってきたから大丈夫だよ。自信持って!」
その言葉を聞いた瞬間、何故か春香の身体から緊張が抜けていった。
ただ安心しただけかもしれないし、もっと別の意味かもしれない。
いずれにせよ春香が勇気づけられたことは確かであった。
結果、見事一位合格でデビューした。
あの時以来、春香にとってお守りのような存在を果たしている。
真への恋心を自覚した後には、別の意味も持つことになった。
このリストバンドには
真の思いが詰まっていると同時に
春香の真への思いも詰まっている。
そっと手に取り、親指の腹で撫でてみる。
ふわふわとした手触り。
小さくハートの刺繍が施されている。
いかにも真が好きそうだ。
自然と笑みがこぼれる。





真、好き。
二人の思いに、春香はそっと唇を寄せた。