ふたりよがり

随分経ってしまいましたが、明けましておめでとうございますw
新年とは関係ないのですがSS書いてみました。
ひびまこですよ。
…ちなみにイメージソングはEXILEの「ふたつの唇」ですw










下らない話ではあるが
自分のした行動について100%正しいと言い切れる人間はどれだけいるのだろう。
その瞬間は間違いないと思っていても後々になって後悔することなど間々あることだ。
なのに非を認めず意地を張る人間の多いことと言ったら。
テレビに映る大人たちを見ていると往生際の悪さにうんざりする。




自分たちの立場は、真逆だ。
周りから非難を浴びることは疑いようもないのに、関係を断ち切れず、あまつさえ正しいと信じている。
見つかることのないように、攻撃されないように、ひっそりと紡いでいる。
自分たちの正しさを確かめている。
要は往生際が悪いのだ。
関係を解消さえすれば見つかることもなく元に戻れるのに。
そんな勇気もない。
まるで傷を舐めあう動物の如く
自分たちは寄り添っている。





そんなことを、響は考えていた。
夜中の薄明かりの中、真の髪を梳きながら。
少々癖っ毛なため誤解されやすいが、真の髪は非常にきめ細やかで美しい。
小さく寝息を立てて眠りに落ちている。
性別が分からなくなるほど端正な顔立ちが、今はどことなく幼く見える。
寝顔すらもかわいいなんて卑怯にもほどがある。



真の想いが自分のそれと同じだと知った時、響は飛び跳ねたくなるほどに嬉しかった。
二人で生きていけると思った。
だがすぐに簡単には行かないと痛感することになった。
普通ではないのはよく分かっていたはずだ。
数多くの困難があることも。
しかしいざとなると足が竦んでしまった。
正面から立ち向かうにはあまりに大きく強力すぎた。
だから逃げている。
そして捨てることもできずに二人でいる。




「ひび、き」
真の睫毛が揺れる。
起こしてしまったようだ。
響はほほ笑み、真の頬に触れる。
ミルクのように温かい。
「ごめん、起こしちゃったな」
「ううん、いいよ」
「まだ夜中だから寝てて」
「うん」
頷いた真だが、じっと響を見つめて眠ろうとしない。
「どうした?」
「響…泣きそうな顔してる」
視線が大きくぶれた。
思っていることをそのまま言い当てられたかのような感覚がした。
動揺が表に出たのだろうか、真が更に不安そうな顔になる。
「何かあったの?」
「いや、何もないぞ?…何も」
真が上体を起こす。
そのまま響の腕をきゅっと掴む。
「響、響」
まるで幼い子供のように縋りつく。
「大丈夫だ、真」
白い腕にそっと手を添える。
「考え事してただけだから」
「考え事?」
「…自分、このまま真といていいのかなって。
別れた方が真は幸せになれるんじゃないかって考えてたんだ」
真の瞳が揺れた。
続いて首を大きく横に振る。
しっかりと――懸命に。
「そんなことない。ボクは幸せだよ。響と一緒にいられて、笑いあえて。
響のこと、大好き」


身体の反応は、早かった。
声を上げる間もなく、真は響の腕に抱かれていた。
一拍遅れて真が驚きの表情を見せる。
「え、ええ!?」
真の裏返った声が、どこか遠く聞こえる。




真のためなら、響はいつでも身を引く覚悟をしていた。
彼女を不幸にするくらいなら、我那覇響はいなくていい。
なのにこうして、幸せだと笑ってくれる。
なんて残酷で、なんて――愛しいのだろう。
自分が情けない。
こんな愛情表現でしか、彼女を繋ぎ止めておけない。


「響…く、苦しいよ…」
真の言葉で我に返った。
慌てて解放する。
真の顔に動揺の色はないが、きょとんとしている。
「ご、ごめん」
「いいよ。…ちょっと嬉しかったし」
真がはにかむように笑う。
その笑顔に、響は急に恥ずかしくなってきた。
「変なことしちゃったな…寝よっか」
「うん。…ねえ」
「響もちゃんと寝てよ?さっきあんまり眠ってなかったでしょ」
響は軽く驚いた。
上目遣いの目が見つめる。
気付いていたのか。
思わず苦笑する。
「分かったよ」
同時に布団にもぐりこみ、視線を交わす。
お互いの体温で布団の中はとても温かい。
「じゃ、おやすみ」
「おやすみ」
真が目を閉じたのを確認した後、響も眠りへと落ちていった。





守るとか、そんなことじゃない。
自分はただ真を繋いでいるだけだ。
決して離れないようにと。
周りから引きずり出されないようにと。
それは悪いことかもしれない。
でも止める気にはならない。
自分は真を必要としているし、真も自分を必要としてくれているから。








うっすらとしたまどろみの中で響は思った。
このままずっと
二人だけの世界に閉じこもり続けるのも、悪くない――と。