揺れるボクらと繋がる心

とある方から「電車」とお題を頂きましたw
ということでちはまこですよ〜。











電車の揺れるリズムというのは、どうしてこうも眠気を誘うのだろう。
ゆっくりと流れていく景色を見ながら真は考える。
既に睡魔が意識を蝕みつつあるので、考えると言うより思うと言った方が正しいかもしれない。
ちらりと横を見る。
千早も瞼が重そうだ。
そう言えば昨日も遅くまでボイスレッスンをしていたと聞いた。
「千早、眠いの?」
「ん…少し」
「ごめんね、買い物に付き合わせちゃって」
「いいのよ。私も楽しかったし」
にこりと笑顔を返してくれる。
さり気ない優しさが嬉しい。
「ちょっとは寝てていいよ。着いたらボクが教える」
「でも…」
「無理言ったのはボクだから」
降りる駅まではまだ時間がある。
千早は逡巡したようだが、すぐに頷いた。
「じゃあ、お言葉に甘えようかしら」
「うん。おやすみ」
おやすみなさい、と呟き、千早は目を閉じる。
本当に疲れていたんだなと真は申し訳なく思った。
千早は冷たいようで本当はとても心優しいから、断るなんてできなかったのだ。
することもないので吊り皮が揺れるのを眺めている。
ふと肩に重みを感じた。
振り向くと千早がこちらに寄り掛かって来た。
驚いて一瞬固まってしまった。
が、無防備な千早を見るとそれも徐々に溶けていく。
もう寝息を立てているので無意識だろう。
「(睫毛長いなあ…羨ましい)」
そんなことを思いながら、真は愛しそうに千早の髪を撫でる。
千早のどんな顔も魅力的だが、寝顔は初めて見た。
普段は大人びた印象だが、寝顔はまだまだ幼い。
彼女の秘密をひとつ知った。
それはいけないことのようにも、大切なことのようにも思えた。
昼から夜に変わろうとしている。
赤とオレンジの夕日がとても綺麗だ。
不規則な揺れに身を任せながら、日々の幸せを噛み締めていた。