彼女と彼女の違い

一時間SSに参加しました!

テーマは蝉時雨」「車」「スイカ」「男装」です。
男装をチョイスしました。
もう話の展開は見えてるようなものですがw








「あーあ、今日の仕事もこんなのかあ」
衣装を着た真が珍しくため息をつく。
紺色のスーツにストライプのネクタイ。
いわゆる男装である。
雑誌の表紙の仕事が入ったと聞いた時は小躍りしたものだが、衣装に袖を通してみると少し気持ちが沈んだ。
雑誌の読者は多くが若い女性のようだ。
自分が求められているものと自分が求めているもの。
食い違っていることは最初から分かっている。


「何暗い顔してるんだよ、真」
視界に入ってきたのはデュオを組んでいる響。
本気で凹んでいることを気取られたくなくて少しおどけて答える。
「そりゃあ男の人みたいな衣装は嫌だよ。ボクはもっと可愛いのが着たいんだ」
「ふうん。気持ちは分かるけどなー」
響も真と同じスーツ姿。
真よりもだいぶ大きな胸は特別な下着で目立たないようになっている。
「そういえば響も前はカッコいい仕事が多かったよね」
響は真と組む前はソロで活動していた。
その時期の写真集やジャケットは息を呑むようなクールな印象のものが多かった。
何でもなさそうに響が答える。
「そうだなー。ファンがそれを望んでるなら仕方ないことだし」
ニッと笑って、手に持っていたスポーツドリンクを飲み干す。
その様子を見て真がぽつりと一言。
「大人だよなあ響は」
「ん?歳は真の方が上だぞ?」
「そうじゃなくて」
的外れな答えに、少し苦笑する。
「ボクはまだ仕方ないって割り切れないんだ。
ファンはカッコいいボクを求めてるのは分かってるけど、もっと女の子らしくなりたいって
ボクの気持ちを分かってほしいって」
何て子供じみているんだろう。
自分で思って嫌気がする。
ふうん、と響は鼻を鳴らす。
馬鹿にするのではなく、そんなものなのかと納得するような様子だ。
「いいじゃないか、そう思ってても。女の子は誰でも可愛く見られたいだろ?」
真は少し低い位置にある響の顔を見やる。
空き缶をダストシュートに投げ入れた。
響は真の胸を指差し、つつく。
「大体真は自分を押し殺し過ぎなんだよ。少しくらいわがまま言ってもいいんじゃないかな
何なら自分がプロデューサーに頼んでみるし!」
な、と笑って念押しする。
どうして、と真は思った。
どうして響のこんな言葉だけで自分の心はこんなに軽くなるのだろう。
彼女の言ったことは信じられるだけの安心感に満ちていた。
響は魔法の力を持っている。


「ほら、ネクタイ曲がってるぞー」
ぎこちなく結ばれた真のネクタイをもう一度結び直す。
自然と笑みがこぼれる。
「響、ありがとう」
「こんなの大したことじゃないさー」
ネクタイに集中している響は聞き流す。
だから気付かない。
真の言葉にもっと大きな意味が含まれているということに。
「できたぞ!じゃ、時間だしスタジオ行こう」
「うん」
スーツを翻す響を追って、真も走り出す。








きっと彼女と一緒なら、何をやっても楽しいんだろうな
そんなことを思いながら







男装なんて素敵な言葉!!
予想通りだったらすいません。
捻りが足りない硬い頭です…。。