君のための花

一時間SSに参加しましたよー!

今回のテーマは「命綱」「蜃気楼」「雷」「紫陽花」。
紫陽花を選んでみましたー。








「やっぱり降ってきたわね」
「ホントだねー。伊織が傘二つ持ってて助かったよ」
「フフン、感謝しなさいよ」
ダンスレッスンの帰り道。
天気予報を見て午後から雨が降ることは知っていた。
案の定晴れているからと傘を持ってこなかった真のために、2つ持ってきて正解だった。
伊織にとって雨はそれほど嫌いなものではない。
ここ最近は蒸し暑い日が続いていたから、苛立っていた気分も洗い流されたようだ。
ピシャリピシャリと雨が跳ね返る音が耳に心地いい。


「あ」
真の足が止まった。
彼女の後ろを歩いていた伊織はぶつかりそうになったが、慌てて急停止する。
「ちょっと、急に止まらないでよ」
「ああ、ごめん。紫陽花が綺麗だなーと思って」
真が指差す先には、確かに紫陽花があった。
固まって咲いているので、恐らく誰かが植えて育てているのだろう。
雨粒を跳ね返して美しく咲いている。
色も紫、青、ピンクなど様々で人の目を引く。
「ねえ知ってる?紫陽花って、土の性質で花の色が変わるんだって」
「へえ〜そうなんだ」
紫陽花は土が酸性かアルカリ性かで花の色が決まる。
酸性だと青色が強く、アルカリ性だと赤色が強くなるのだ。
真は納得したように頷いた後、思いついたように伊織へと振り向く。
「…何か伊織みたいだね」
「どういうことよ?」
「接する人によって態度が違う」
「きぃーっ!何よそれ!バカにしてるの!?」
真はその反応を予想していたようで、おかしそうに笑って伊織の抗議を受けていた。




ひとしきり怒った後、熱が覚めた伊織は
「まあ確かに、私と紫陽花は似たり寄ったりな部分があるかもしれないけど…」
珍しく弱気な伊織を見て真は聞き返す。
「どういうこと?」
「紫陽花の花言葉ってね、あまりいいのがないのよ
移り気、高慢、自慢家…。認めたくないけど、私に当てはまるところが結構あるの」
怒って少し冷静になったのだろうか。
伊織が普段は口にしないようなことだ。
雨が降っていることもあるし、ブルーになっているのかもしれない。
「でもさ、伊織。ボク、紫陽花のいい花言葉知ってるよ」
傘を傾けてこちらを見上げてくる伊織。
どことなく自信に欠ける瞳に、優しく微笑んでやる。
「『辛抱強い愛情』。きっと伊織なら恋した時に幸せになれるよ」
ね、と頭を撫でると、いつも通りの睨み顔。
「フンッ何言ってるんだか」
逃げるように真の横をすり抜け、足早に歩いて行く。
「あ、伊織ーちょっと待ってよー」
追いかけてくる真を横眼で見て、伊織は傘の影で小さく笑った。
雨はもうすぐ上がりそうだ。






きっと君は紫陽花のように
ゆっくりと確実に、大きくなっていくのだから











今回のテーマは紫陽花でしたー。
紫陽花について調べてると、伊織と重なるところが結構あったので
いおまこという組み合わせにしてみました。
花言葉が結構酷かったんですけど(w)元気な女性とか、女性に関する言葉が多かったです。
凛として咲く強い花ですからねー。