ダイヤモンドの君

1時間SSまたもや参加させてもらいました!
テーマは口紅、空、レッスン、宝物。
今回は「宝物」で書きました。
タイトルと本文が合ってない感がありますが…;












8畳の寝室で
「宝物、ね」
ベッドサイドの光が響の顔を照らす。
ふうんと考える素振りをする。
しかしそれは5秒と持たなかった。
「真だな」
「またそんなこと言って…おだてたって何も出ないよ」
「本当のことさー」
響はいつものように笑って真にキスをした。
二人は今ベッドの上、並んで横になっている。
と言っても事後とかそういう訳ではない。
二人の間では『そういうことをする時は最低一日空ける』と決めている。
そして昨日の夜飽きるほど身体を重ねたばかりだ。
だから真も響もちゃんと服を着ている。




薄暗い闇の中、真は響に抱きしめられている。
拘束しない程度の優しさで。
響の温もりの中で真が言葉を紡ぐ。
「ボクのことそう言ってくれるのは嬉しいけどさ、何ていうか…響のこと良く知りたいから」
「そっか。じゃあ真剣に考えるぞ」
しばしの沈黙。
響の鼓動が伝わってくるほどの静けさ。
どうやら本当に真剣に考えているらしい。
「やっぱり動物達かなあ」
「そうなんだ」
と言いつつ、真には大方予想は付いていた。
沖縄から上京する時にも彼女はわざわざ動物たちも連れてきたのだ。
「うん。特に犬美なんかは小さい頃から一緒だからさ。ペットっていうより家族って感じだ」
「家族、かあ」
故郷から遠く離れて暮らしている響にとって家族は恋しい存在なのだろう。
辛い時も悲しい時も、動物たちは彼女を癒し、励ましてくれる。
響の中で彼らの存在はとても大きいものなのだ。
「離れるなんて絶対に考えられない。あいつらとはずっとずっと一緒にいるんだ。
宝物は宝物でも、ルビー級だな!」
ルビー、か。
そこまで言ってもらえるなら彼らも幸せだろう。
真は優しい目をしている彼らを思い描き、少しだけ嫉妬した。



「実はさ、アイドルアルティメイトの決勝で真に負けた後、自分家に帰ってからわんわん泣いたんだ」
「ええっそうなの!?」
真は思わず声をあげた。
あの時響は悔しそうな顔はしていたものの、とても爽やかに去っていったのだ。
いや、そう見せていただけで心では泣いていたのか。
「さすがにライバルの前で泣けないよなって必死で我慢したんだ。
その時犬美や動物たちが傍に寄り添ってくれて、自分が泣きやむまでいてくれたんだ。
凄く心強かったなあ、あれは。そういうことがあるから手放せないんだよね」
照れくさそうにはにかむ笑顔は、やっぱり可愛い。
「凄いなあ。人の悲しみが分かるんだね。主人が愛されてる証拠だよね」
「へへっ」
ぎゅっ
真の腕が響の背中にまわされる。
「でもね、響」
「ん?」
「今度はボクに、響のそういうところ見せてよ。もう我慢しなくていいんだから。
明るい部分も、弱い部分も全部全部見せて」
唇にキスを落とす。
あの時響が見せなかった弱み。
見せなかったのはライバルだから。
完全に気を許せない仲だったから。
今は違う。
こうやって抱きあえる。
彼女の全てを受け止められる。
「…ありがとうな、真」
抱き締められる力が強くなる。
「あいつらは大切だよ。でも負けないくらい、真も大切だし、好きだ。愛してるから」
伝わってくる体温、匂い、鼓動。
このまま目を閉じればあっという間に眠りに落ちてしまいそうな幸福感。
真にとっての宝物はこれだ。
ダイヤモンドよりもキラキラ光る、美しい粒。
真は、目の前の愛しい人を思い切り引き寄せた。
光る粒を捉えて離さないように。







「やっぱり自分の宝物は真だな」
「もーいいよそれ」
「顔赤いぞ?」












1時間SS参加2作品目です!
どうやら私の最近のブームはひびまこのようで…。
「宝物」にしようと決めてはいたんですがなかなか進まず…難産でした。
結局甘々に逃げました←
でもイチャラブいいですよね!最高w