そして言葉は歌になる

まだまだ寒いですね。
寒さを吹き飛ばすためにちはまこを書きました。
成果は微妙でしたが…；

最近になって気付いたことだが、真は鼻歌を歌っていることが多い。
と言っても大抵は音に出さずに小さく頭を揺らす程度。
いつも同じリズムだ。
千早が知らない曲を真が歌っている。
クラシックだけでなく洋楽や邦楽も一応はざっと聞いている彼女にとって、それは興味深いことだった。
「何の曲？それ」
「うわ、聞いてた？恥ずかしいな〜」
照れ隠し気味に笑う。
「名前なんてないよ。ボクが勝手に作った歌だから」
「作った？」
「うん。まあ作曲ってほどでもないけど」
確かに、真が机に向かって唸りながら作曲している様子なんて想像できない。
きっと適当に歌っているうちに決まったメロディができたのだろう。

「ちょっと歌ってみて」
「ええ！？いやだよ恥ずかしい！」
それはそうだろう。
提供するわけでもない自作の曲を披露するなど、千早でも恥ずかしい。
だから、こう言った。
「私が歌詞をつければ恥ずかしくないでしょ？」
「千早が？」
真は思いもよらなかったようで、大きな目を瞬かせている。
「そう。だから歌って？」
お人よしの彼女は渋々ながらも、メロディを口ずさみ始めた。
それに合わせて千早は思いを巡らせる。
この曲にはどんな歌詞が合うか…。

胸に渦巻く感情を
口にしてもいいですか
声に出してもいいですか
見ているだけはもう耐えられない
どうかお願い
私をその瞳に移して
あなたの傍にずっと
寄り添っていたいと願うの

「どう？」
「……」
真は千早を見て硬直している。
何かまずいことをしただろうかと不安になる。
「駄目だったかしら」
「い、いや、まさか自分で適当に作った歌がこんなになるとは思わなくて…」
どうやらびっくりして固まっていただけらしい。
心配して損をした。
「それに、千早が恋の歌作るって意外だったし」

千早の胸にチクリと痛みが走る。
ああ、やはり何もわかっていない。
この歌詞は
今目の前にいる相手を想って作ったものだということ。
分からなくていい。
分かってくれないほうがいい。
胸が詰まってしまうだけ。
自分が我慢すればいいのだ。
それで何もかもいつも通りに進む。

「私だって恋に恋したりはするわよ」
真がずいっと顔を寄せてきた。
「ってことは今は好きな人とかいないの？」
「まあ、そうね」
千早は穏やかな笑顔を浮かべる。
真には絶対に悟れらないように。

あなたへの想いを名付けるならば
それはきっと恋

ちょっと突発過ぎたかも、と反省しています。
小説の神が舞い降りてこないでしょうか。。