寒空の下でも

ちはまこです。
懲りもせず冬ネタを引っ張ってます。








「…寒い」
「我慢すれば?」
「無理に決まってるだろ…」
濁った空の下、真と千早は歩いていた。
今日は簡単な営業だけだったので昼過ぎに帰れることになったのだ。
昼だろうが夜だろうが、冷気は容赦なく肌を刺していく。
マフラーに首をうずめている真に対して、千早はこともなげにさっさと歩いて行く。
寒さにめっぽう弱い真にとって冬は天敵だ。
うっかり耳当てをしてこなかったせいで感覚が無くなっている。
千早は何故平気なのだろうと不思議に思った。
「千早は寒くないの?」
「そうね。昔から寒さには強いほうだから」
そういう彼女は真よりも軽装だ。
一応マフラーとダウンは身につけているが、手袋や耳あてはしていない。
なのに完全装備した真のほうが寒がっているとはどういうことだろう。



「…手、繋ぐ?」
唐突に千早が口を開いた。
そっと手袋をしていない素の手を差し出してきた。
真は小さく笑った。
シャイな千早だが最近はこういうことを言うようになってきた。
手袋してるよ、などと野暮なことは言わない。
手袋を外して千早の手を握る。
「冷たいね」
「手袋してなかったからかしら。真は温かいわね」
「ポケットに手突っ込みっぱなしだったから」
優しく千早の頬に触れてみる。
驚いたのか、少し彼女の体が反応した。
やはり冷たかった。
「ごめん、びっくりさせた?」
「いきなりはやめて」
ん、と真の生返事。
「晩ご飯鍋がいいな〜…。ねえ、千早ん家でやらない?」
「2人で?私はいいけど」
「やった!そうと決まれば買い出し買い出し!」
ご機嫌な真に、苦笑する千早。






寒いのは嫌いじゃない。
だって貴女に触れる理由ができるから。












久しぶりのちはまこ。
短くてすいません。
千早のデレ分が少なかったなー、と思います。
真は夏生まれなので寒さに弱いんじゃないかと勝手に妄想しました。