キミに仕返しができるなら、それはきっと

また百合m@s108式に投稿しました。
はるまこです。
小悪魔な春香さんに振り回される真の図。







「痛っ…」
指に鋭い痛みを感じて、反射的に手を引っ込めた。
見ると赤い縦線が出来ていた。
これだから紙は厄介だと真は思った。
隣で一緒に台本を読んでいた春香が覗き込んできた。
「どうしたの?」
「いや、紙で指切っちゃっただけ」
そう言って右手の人差し指を見せる。
すると


ちゅっ


そこをキスをされた。
正確には、傷口を吸われた。
時間にして1秒ほどだ。
「春香」
「ん?」
「何でもうちょっと普通にキスしないの?」
彼女はいつもそうだ。
何だかんだと理由を付けてキスをする。
しかも妙なところに。
一番重要なところには滅多にしてくれない。
「普通ってどんな?」
「どんなって」
「私には分からないよ。真がして?」
ずるい。
真は顔を歪めてしまった。
彼女は実に楽しそうに真をいじめる。
「ほら、してよ」
そんな表情をされたら、言うとおりにするしかないと、分かっている筈なのに。
真は少し躊躇いながら肩に手を置いて、楽しそうな春香の顎を上げる。
まだ慣れないからか、唇が震える。
合わさると体中に電流が走った。
「(春香の、体温)」
じんわりと広がっていく感覚。
それだけで満足なのに今度は
するりと舌が入ってきた。
「!」
身体が跳ねてしまった。
これにはもっと慣れていない。
きっと春香は吹き出しそうになっているだろう。
何か言ってやりたかったが、仕方がないから身を委ねることにした。
「ん…」
蕩けそうになる理性を何とか繋ぎとめる。
春香は真の気持ちよさのツボを熟知している。
こんなこと、片手で数えられるくらいしかしていないのに何故分かるんだろう、とつくづく謎に思う。



息ができなくて、頭がぼうっとし始めた頃。
春香の方から唇を離した。
銀色の糸が一瞬二人を繋ぎ、切れた。
「は…っ」
真の口から吐息が漏れた。
情けないことに膝が笑っている。
春香に支えられるわけにはいかないので何とか踏ん張った。
「えへへ、真ったらすぐ息切れるね」
息さえ乱さない春香が笑う。
「そんなの当たり前だろ」
ばつが悪そうに頭を掻く真。
息継ぎの仕方さえ知らないのだ。
春香のようにやれるのならとっくにしている。
「でもね、」
胸のあたりが重くなった。
春香がもたれかかってきたからだ。
「真のそういうところが、私は好き。
ヘタレで、寂しがり屋で、不器用なところが」
真の香りを確かめるようにすうっと息を吸う。
ほら、ずるい。
ボクにどんなに意地悪をしたって許されるのはキミだけだ。
翡翠の瞳を、揺れる髪を、染めた頬を、キミの全てを見る度に
ボクは許してしまう。



「ねえ、真?」
名前を呼ばれて、有無を言わさず春香の唇を奪った。



次の瞬間ボクは
いつものキミのように微笑んで見せよう。











使用お題
14)キス
23)アクシデント
24)指
29)髪
44)血
66)笑顔











またマイナーカプに走ってしまいました。
他の方たちがメジャーなのを書いていらしたので私くらいはいいよね〜、というノリです(殴
ウチの春香さんは黒かったり閣下だったりではないのです。
でも今回は真っ白でもないので灰色春香さんです。
こういうどっちつかずが好きですね。
…てゆうか全年齢対象で舌入れてもいいんですよ、ね?