THE IDOLM@STER Girl's Side 〜とある女性Pの一日2〜

前の続きです。
調子乗って最後まで書きます。
(追記)中間テスト前なのでまた更新停滞します。
次がラストですよ〜。









「よし、頑張るかな」
営業があるという雪乃丞と別れ、軽く伸びをする。
毎日覚えなければいけないことは山ほどあるのだ。
ぼうっとしている暇はない。


「おはようございまーす!」
軽快な声が耳に響いた。
この声は…
「ハル、おはよう」
「あっプロデューサーさん!おはようござ、うわああああああ!?」
「へっ!?きゃああああ!!」
相手は走ってきたかと思うと、コンセントのコードに足を引っ掛けてつんのめった。
彼の体で私は陰に隠れる。


どんがらがっしゃーん!!


物凄い轟音を立てて、私達は倒れこんだ。
「いたた…す、すいませんプロデューサーさん」
「あ、いいよいいよ。怪我ないし」
と答えてから気づいた。
この体勢は明らかにまずい。
何せ彼が私を押し倒している形だ。
「ちょ、ちょっとハル、どいてくれるかな…」
「えっ?」
3秒程の間。
そして理解したのか、大慌てで横に体をどける。
「ああっ、すいません!俺…」
その様子に私は笑ってしまった。
奄美ハル。文句なしの正統派アイドル。
好きな物はサッカーとゲームという典型的な16歳の男の子。
歌が大好きだからという純粋な理由でトップアイドルを目指す。


「俺プロデューサーさんになんてこと…」
真っ赤になってしまったハルをよしよしとなだめる。
するとそこに別の声が聞こえた。
「ったく、朝っぱらから何してんだよ」
私とハルは即座にその方向に振り向いた。
そこには不機嫌な顔をした少年が一人。
「い、伊吹!?いつから見てたんだ!?」
「心配しなくてもどんがらがっしゃーんのところからだ。ハル、そのドジいい加減何とかしろよな」
声変わりのしていないボーイソプラノでまくしたてる。
少々口の悪い彼は水瀬伊吹。
お金持ちの家の御曹司なんだとか。
ファンに対しては猫を被っているが、仲間と一緒だとこの通り。
まあ素直じゃないだけだと私は思うけど。
「ちぇっ分かってるよそんなこと」
ハルは年下の伊吹に怒られてちょっと拗ねている。
真面目で元気なハルと意地っ張りな伊吹はちょっと相性が悪い。
喧嘩をしてほしくなくて仲裁に入る。
「ほら、2人とも落ち着いて」
「あんたもあんただけどね、プロデューサー」
伊吹に言われたけど、私は日頃から慣れてるから全くダメージはない。
「私はどうでもいいから仲良くしてよ。同じ事務所のアイドルが仲悪いなんて嫌よ」
2人を交互に見つめる。
ハルが伊吹の方を向きニコッと微笑んだ。
伊吹は照れたように慌てて目を逸らす。
やっぱり意地っ張りで照れ屋なだけなんだ。
「ふんっ調子狂うぜ。じゃあな」
視線を合わさないまま伊吹は去っていった。


「伊吹のこと、嫌いにならないでね」
「大丈夫ですよ。俺は皆のこと大好きですから」
恥ずかしげもなく言うハルを見てこっちが照れてしまう。
そしてあることに気づいた。
時計を確認して言う。
「ハル、レッスン行かなくていいの?もう9時過ぎてるけど」
「…ああっ!!」
途端にハルの顔が青ざめる。
どうやらすっかり忘れていたらしい。
「そうだ、そうだったんだ!ごめんなさいプロデューサーさん、また今度!!」
慌ただしくドアを開けて走り去っていくハル。
ああいうドタバタは、本人には悪いけど見ていて楽しい。
「って、私も音無さんに指導してもらわなくちゃ」
くるっと事務室の方に足を向けた。




「ルーキーズでは他のユニットもレベルが低い代わりにアピール27回の一発勝負なので、新人ではかなり難しいと言えるでしょう」
「つまり10点満点で勝たないと負けることもあるんですか?」
「そうですね。自信のない新人の間はボムを最初に落としておいた方がいいですね」
音無さんの指導のもと、私は膨大な量の情報を頭に叩き込んでいた。
アイドル界では大手の765プロだが、人材が少ないため私に即戦力になってもらいたいらしい。
勉強は嫌いじゃないけどちょっと頭が痛くなる。
それを察したのか、音無さんが優しく声をかけてくれた。
「疲れているみたいですね。10分ほど休憩しましょうか」
「えっいや、まだできます」
「ダメですよ。根を詰め過ぎると身体を壊しますから」
ね、と片目をつぶる。
ドキッとした。
事務員がこんなに色っぽくていいのだろうかと考えてしまう。
「外の空気を吸ってきたらいいですよ」
「はい、すいません」


ガコン、と音がしてコーヒーが落ちてきた。
手を伸ばして熱い缶を取る。
確かに外に出たら頭がすっきりした気がする。
外と言ってもエレベーター前の自販機コーナーだけど。
ベンチに腰かけてプルトップを起こす。
口をつけるとほろ苦い味が流れ込む。
ふと顔を上げると、2人組が自販機の前に立っていた。
背の高い方がスポーツドリンクとジュースのボタンを押して、落ちてきたそれを手に取った。
楽しそうに会話をしている。
横顔で分かった。
「あ、誠と大和!」
呼ばれた2人が同時に振りかえった。
「プロデューサーさん」
「あっプロデューサー!おはようございまーす!」
ふわりと微笑んだのは菊地誠。
時折女性と見間違われるほどの端正な顔立ちをしている。
仕草や髪質まで女性のそれだから仕方ないのかもしれない。
でも本人はそれを嫌がっていたりする。
元気よく挨拶してくれたのは高槻大和。
家はちょっと貧乏だけどありあまるパワーで感じさせない。
健気な姿が母性本能をくすぐる。
紅茶の缶を開けながら誠が聞いた。
「勉強はどうですか?」
「ちょっときついけどいい経験よ」
「うっう〜!無理しないでください〜」
「ありがとう大和」
低い位置にある大和の頭を撫でる。
嬉しそうに目を細めて笑ってくれる。
「そういえば2人は今日営業とかないの?」
「ええ。オフなんですけど、大和の買い物に付き合う予定なんですよ」
大和の方を見ると何度も頷いた。
「誠さんに頼んで、妹の誕生日プレゼント選んでもらうんです〜」
確かに、事務所のアイドルで女の子へのプレゼントに一番詳しいのは誠だろう。
私や社長は忙しいから付き合ってあげられないし。
内心誠はちょっと傷ついているかもしれないが。
「そっか。素敵なの選んであげてね」
「はい!」
えへへ、と照れ笑いした。
こういう表情に女性はキュンキュンしてしまう。
梓さんや音無さんのドキッとはちょっと違う。
「じゃ、私そろそろ帰らなきゃ」
「あ、じゃあ私たちも行こうか大和」
「はいっ。プロデューサー頑張ってくださいね」
「ふふ、ありがとう」
大和と誠は仲良く手を繋いで去っていった。
後ろ姿が本当の兄弟に見えて微笑ましい。
プレゼントって、可愛いテディベアとかを選ぶのかな、と思った。




そこから昼まで事務室にこもりっきりだった。
かれこれ4時間ほぼ休みなしだったのでぐったりしてしまう。
ちゃんと昼休み40分取ってくれるのが有難い。
つくづく音無さんは飴とムチが上手い。
昼食を取り終わり、ロビーで本を読もうとしたら


♪…♪…


仮眠室から歌が聞こえてきた。
この透明感のある声、彼に間違いない。
ドアにそっとノックをしてみた。
「どうぞ」と返ってきたのでゆっくりと入る。
「やっぱり千速だった」
「プロデューサー」
千速真一、人を惹きつける圧倒的歌唱力を持つアイドル。
冷たいような雰囲気を持つが根は熱い。
クールな性格と顔立ちからファンからは「千速様」と呼ばれているとか。
「聞いたことないな、新曲?」
「ええ。明日収録なんですよ」
そう言って持っている楽譜を見せてくれる。
また難しそうな曲だ。
arcadiaっていうんだ」
「ええ。理想郷って意味です」
千速は楽譜をじっと睨んだ。
どう歌うか悩んでいるようだった。
彼は歌を難しく考えすぎているところがある。
私は歌って感じるものだと思うけど。
「もっと気楽に歌ったらいいと思うよ」
「気楽ですか?」
「うん。肩の力抜いてさ。楽しくないよ?」
じっと見つめられたけど、見つめ返してたらふっと表情を和らげてくれた。
「楽しい…か。そうですよね」
「そうだよ。千速が楽しまないとファンの人たちも楽しめないし」
すると何故かあはは、と笑われた。
よく分からないまま私も笑った。
「完成したらまた聞かせてね」
「ええ。CD貸しますよ」
腕時計を見ると、休憩終了の5分前だった。
千速に別れを言って音無さんの元へ戻った。







皆の顔を見ていると、元気になれる気がした。









2話目です〜。
今回は書くことあまりないのです。
ただのスペース取りw
後出てないのは4人ですかね??
どうやって書くか思案中ですね。