THE IDOLM@STER Girl's Side 〜とある女性Pの一日3〜

ラストになります。
これからもちょこちょこっと書くかもしれませんが、今回はおしまいです。









午後4時、ようやく私は解放された。
音無さんは突っ伏す私に、お疲れ様でしたと声をかけてくれる。
そんなこと言われたら次も頑張るしかない。


荷物を持ってから気づいた。
「うわっ凄い肩凝ってる」
元々懲りやすいし今日は長時間机に向かっていたからだ。
疲れを取るためロビーでゆっくりしてから帰ることにした。
ロビーの周りは相変わらず少し慌ただしい。
こんな中でのんびりしてるとちょっと申し訳ない気分になってくる。


「あれ、プロデューサーさん」
こののんびりした声は…
「梓さん」
振り向くと長身の男性が立っていた。
青色がかった髪にぴょこっとアホ毛が持ちあがっている。
名前を呼ぶと朗らかに笑ってくれた。
「こんばんは」
「こんばんは。…でも梓さん、今日は休みの日なんじゃ」
「えっとそれが、散歩に行こうとしたらいつの間にか事務所の前にいまして…」
「ああ、成程」
つまりまた道を間違えて彷徨っていたのだろう。
765プロ最年長アイドル、三浦梓さん。
にもかかわらず年上の風格はなく、おっとりとしている。(律の方がしっかりしている…
でもここぞという時は芯の強さを発揮するあたり、大人の男の人なんだなと思う。
「でもまあ事務所だからよかったじゃないですか。この前事務所に行こうとして横浜中華街に行ってたんでしょ?」
「そうなんです。ちゃんと道を間違えずに向かったはずだったんですけど」
その根拠のない自信が原因なんじゃ、とは言わなかった。
梓さんが悲しそうに眉を下げるのは目に見えている。
「でも優しいお姉さんたちがいまして、ちゃんと帰って来れたんですよ。お礼を言ったら何故か顔を赤くしてましたね〜」
それは間違いなく梓さんの天然癒し系オーラのせいだろう。
梓さんに笑顔を向けられてそうならない女性は恐らくいない。
正直私でも微笑まれたら胸が高鳴ってしまう。
そんなことは露知らず、梓さんは相変わらずの笑顔。
「今日は迷ってラッキーでした。プロデューサーさんに会えましたからね」
だからそんな視線を送ってこないでください。





梓さんと会話をしていると
「あっプロデューサーさん見っけ!」
といきなり背中に抱きつかれた。
「きゃっ!ちょ、ちょっと何よ?」
肩からひょこっと人懐っこい顔が現れた。
「いや〜仕事帰りにプロデューサーさんに会えるなんてね」
金髪を揺らせてご機嫌な彼は星井光希。
14歳とは思えない抜群のビジュアルの持主だ。
非凡な才能の持ち主なのだが、なかなかやる気を出さない問題児でもある。
「もう光希っ。いきなり抱きつかないでよ」
「プロデューサーさんは俺に抱きつかれるの嫌なんだ?」
流し目で囁かれる。
普通の14歳はそんな視線投げかけないよ。
「嫌じゃないけど困るのよ」
肩に回された腕をどけると光希は肩をすくめた。
彼はスキンシップが過剰だ。
亜央と真央もそうなのだが光希にされるとレベルが違うような気がする。
「それよりもちゃんと営業はかどったの?」
「ん〜まあまあかな」
「まあまあじゃなくてちゃんと本気で取り組んで欲しいの」
「プロデューサーさんがキスしてくれたらやる気出すよ?」
「はいはい」
口説かれたって本気じゃないことくらい私にだって分かる。
困った私は梓さんに目配せする。
梓さんは苦笑すると私と光希の間に割って入る。
「ほら光希くん、プロデューサーさんが困ってるよ」
「ちぇっ。まあいいや、じゃ俺帰るね」
「ああうん、バイバイ」
ボストンバッグを提げて帰っていった。
梓さんもこっちを見て
「じゃあ僕も帰りますね」
と言った。
反射的にペコリと頭を下げる。
「あ、さようなら」
「ええ、さようなら」
さて、私も帰るとしよう。




ビルの外に出ると、冷たい風が髪を攫おうとしてきた。
コートを着るほどではないが少し肌寒い。
「おっプロデューサー」
今日何度目かも分からない呼びかけ。
夕闇に照らされた二つの影が近づいてくる。
「そっか今日は出社日だったっけ」
そう笑いかけてくれた日焼けした彼は、我那覇響鬼。
沖縄出身の快活な少年だ。
さっぱりした性格で接していて疲れない。
それが今は有難かった。
「勉学は大事なことですが、ご無理はなさらぬよう」
古風な物言いの彼は四条拓真。
この言葉遣いに銀髪も相まって神秘的な印象を受ける。
ファンからは銀髪の貴公子と呼ばれているそうな。
2人は元は961プロという芸能事務所に所属していた…らしい。
私がこの事務所に来る前のことだから詳しくは知らない。
色々と事情があって765プロに移籍してきたそうだ。
「2人ともありがと…くしゅっ」
思わぬくしゃみが飛び出してしまった。
急に寒いところに出たからだろうか。
「あれ、寒いのか?」
「コートがありますのでお貸ししますよ」
「ううん、いいの。風邪とかじゃないから」
響鬼はなおも心配そうに顔を寄せてくる。
「まあ顔赤くないから大丈夫だとは思うけど…気を付けなよ」
「ありがとう響鬼
拓真も近づいて声をかけてくれる。
「今夜は冷えそうですから、温かくしてお休みになってくださいね」
「うん」
これから夕食を食べに行くのだという響と拓真。
一緒に行かないかと誘われたが断った。
色々あって少し疲れたのだ。
夕食はゆっくりと一人で取りたい気分だった。





「(今日は結局、アイドル全員と会ったなあ…)」
空に映る青と赤の境界線を見ながら思った。


こんな個性豊かなアイドルに囲まれて、私は上手くやってます。










オチが思いつきませんでした(殴
アイドル全員書くにはどうしたらいいのだろうかと思ったのですが
結局ねじ込みましたね。
基本設定以外は私の想像で書きました。
なので読者さんのイメージとは違っているかもしれません。
これからはいつも通り百合を書いていくつもりです。
でも端々にこんなGSモノを挟むかも?