ささやかなデートと反抗期

あずちはです。
普通の日常を書いてみました。







都内某所。
三浦あずさはいそいそと出かける準備をしていた。
今日は大切な人と大切な時を過ごせる日だから。
アイラインを引いてリップを塗って。
あの子はどう思うだろう、と考えたら楽しくなった。
髪をセットしカバンも持った。
その瞬間、インターホンが鳴る。
ジャストタイミングだ。
「は〜い」
急いでパンプスを履いてドアを開ける。
そこには
千早のはにかんだような笑顔があった。


久し振りに2人とも休みが取れたのでショッピングでも行こうかという話になった。
普段あまり2人きりでどこかに行けないので、千早は嬉しそうに頷いた。
ちなみに千早があずさを迎えに来たのは、待ち合わせをしてもあずさはきっと迷って時間通りに来ないからだ、という理由だ。
あずさは自分が少し情けなくなった。


「それでどこに行くのかしら?」
すると千早はバッグの中からパンフレットを取り出した。
「はい、最近大型のショッピングモールができたらしいのでそこにしませんか?」
「あらいいわね〜。千早ちゃんの服選んであげるわね」
千早が慌ててぶんぶんと首を横に振る。
「ええ!?い、いいですよ!」
「うふふ遠慮しなくていいのよ〜」
こうして生真面目な千早をからかうのが、あずさのちょっとした楽しみになっていた。
本人にそれを言うと間違いなく不機嫌になるだろうから、内緒だ。


まずはブティックで服選び。
あずさは自分のそっちのけで千早の服を選ぶのに夢中になっている。
「あ、これ似合うと思うわ〜」
「ちょ、ちょっと可愛すぎませんか…?」
「女の子の着る服に可愛すぎるなんてことないのよ?」
選んだのはフワリとしたスカート。
膝下の長さなので千早も恥じらわないかと思ったのだが、いかにも女の子らしい薄ピンクに抵抗があるらしい。
でもそんなことあずさにはお構いなしだ。
「あ、このキャミソールも可愛いわよ千早ちゃん」
「そんなの着る機会がありませんよ…」
困ったように千早が言ってもあずさは聞こえないふりをする。
でも不思議と千早は怒る気がしない。
あずさに振り回されるのに慣れているからだろうが、もうひとつ
こうやっているのが幸せだから。
結局、スカート1着とキャミソール2着を買った。



買い物袋を抱えながら、次はアイスを食べることになった。
千早は抹茶、あずさはチョコミント
コーンの上に乗った緑色の球体を落とさないように食べる。
するとあずさが千早のアイスを見て言った。
「ねえ千早ちゃん、一口ちょうだい?」
「いいですよ、はい」
あずさの方にコーンを傾ける。
小さく口を開けてぱくりとかぶりついた。
「ん、美味しい」
「あずささんのも一口もらえませんか?」
「あ、いいわよ」
口に含むと、爽やかな香りが鼻へと抜けていった。
「美味しい?」
小さく頷くとあずさがにこりと微笑んだ。
千早は時々、自分と接しているあずさはまるで子供を相手にしているように見える。
つまりそれはあずさが自分を子供扱いしているという訳で。
千早の勝手な憶測なので正しいかどうかは不明だが。
ちょっと癪になった千早は
「あ、あずささん」
「ん?」
「口にアイス付いてますよ」
とさり気なく口の端を指でなぞり
ぱくっと指ごと舐め取った。
横目であずさを盗み見る。
「…ち、千早ちゃん」
顔を赤く染めている。
どうやら作戦は成功したようだ。
それにしてもこの作戦、我ながら恥ずかしい。
「次はどこに行きますか?」
会心の笑みを浮かべながら先を行く。
それを見て、固まっていたあずさも頬を緩ませた。
手をそっと取られた。
ぎゅっと強く握り返した。



その後買い物を十二分に堪能した2人は、夕焼けの中帰路についた。
行きと同じように千早があずさを家に送り届ける。
「じゃあ千早ちゃん、また明日ね」
「はい、さようなら」
そう言ってドアを閉めようとしたら、引きとめられた。
「あ、それと」
「?」
何だか嬉しそうに微笑むあずさ。
「今日みたいに積極的な千早ちゃんも好きよ」
「…!」
今更顔が赤くなってきた。
何ということしてしまったんだろう。
もしあの場面を誰かがビデオに撮っていたら、ひったくって川に向かって投げ捨てているところだ。
「わ、忘れて下さいっ。さよなら!」
あずさはまだ何か言いたげだったが、強引にドアを閉め切った。
明日きっとからかわれるんだろうなと思った。
からかうあずさと、からかわれる千早。
この勢力図はまだまだ変わりそうにない。






好きだからいいか、と千早は幸せなことを考えた。










あずちはです〜。
たまにはなんでもないこと書きたくなったので。
からかうあずさとからかわれる千早と本編で書きましたが
ラジオのせいでこういう関係が脳内で出来上がっていましたw
でもゲーム設定での2人でも変わらないんじゃないかな、と。
傍から見たら幸せそうなラブラブカップルですよ。