真がネコになった日⑤

そろそろ佳境のようですよ。






あずさは抱きしめながら、何をしているんだろうと自問した。
こうしたって解決にならないのに。
真に嫌われるかもしれないのに。


…いや、分かっている。
ただ縋っているのだ。
何もできないし分からないから。
自分が安心したい。
それだけのために真を抱きしめているのだ。


ふっと腕の力を抜き、体を離した。
真がきょとんとして見上げてくる。
「…ごめんなさい、迷惑よね」
気分でこんなことをしてはいけない。
分かっていたはずなのに。


まっすぐに見つめてくる真の瞳があまりに澄んでいていて、引きこまれそうになる。
ずっと見ていたくなる。



ふっと真の身体が沈んだかと思うと、あずさの体にきゅっと軽い衝撃が起きた。
真がうずくまるようにあずさに抱きついたのだ。
力は強くない。
でも決して離したくないという思いが伝わってきた。
「ま、真ちゃん?」
真の顔は見えない。
「…にゃあ、にゃあん」
顔を伏せたまま真がささやくように鳴いた。


真は、自分を慰めようとしている。
何故かあずさはそう思った。
だから真を抱きしめ返した。
痛くないようにそっと。
「ありがとう…」
今なら真が家かた抜け出してここに来た理由が分かる気がする。
多分真は自分が引き取られる時のあずさの視線に気づいていた。
それが不安でいっぱいだったから、気になった。
そんな目をしたあずさを慰めるために押しかけたのだ。
これはあくまで憶測でしかないが、今の真は間違いなく慰めてくれている。
しっかりしないといけない立場なのに慰められている。



真の顔を上げさせる。
『大丈夫?』と語りかけていた。
「ありがとう。絶対、真ちゃんを元に戻すから」
真の行為に応えるために。
彼女と、自分の思いを裏切らないために。









真とあずささんの心が通いました。
何だか私って抱き合う描写が好きみたいですね。
だって微笑ましいじゃないですかw
私はキス以上は書けないし、ストレートな愛情表現だとこうなるんです。
もっと表現広げないといけませんね。
このシリーズは次回で終了の予定です。