等身大のキミとして

真の誕生日なので、お祝いに書いてみました。
真おめでとう〜w







8月29日。
今日はボクの誕生日。
何だか嫌な予感がする。
少し躊躇いつつ、ロッカーに手をかける。
引くと、いきなり何かがボクの視界を遮り更に身体を押し倒した。
「ぅうわああああああっ!?」
ドサドサドサドサッ!!!
そして、あっという間にそれらに埋もれてしまった。


「ちょ、ちょっと真大丈夫!?」
「ぐ…り、律子…助けて…」
たまたま通りかかった律子が惨状を目にして固まった。
それはそうだろう。
何せ無数のファンレターやらプレゼントやらにボクが押しつぶされているんだから。
一瞬の後慌てて律子がモノの山を掻きわける。
「ぶはっ!は〜助かった…。律子ありがとう」
何とか救出されたボクは酸素を求めて胸を上下させた。
「一体どうしたの真…」
「いや〜着替えようと思ってロッカー開けたらいきなりプレゼントの雪崩が起きてさ。まあ、ほぼ女の子からのだろうけど…」
「…大変ね」
どこの部分に同情したのか分からないが律子が頷いてくれる。
「あと、早くこれ戻さないと迷惑になるわよ」
「…あ゛」
顔が引きつるのが分かった。
…そうだった。
このロッカールームはアイドル皆が使う。
皆が来るまでにプレゼントの山を片づけるのは相当大変だ。
「早くするわよ。私も手伝うから」
「律子ありがと〜」
「はいはい」


こういうことになるだろうとは予想はしていた。
いざ直面すると嬉しいやら悲しいやら。
そりゃあ誕生日自体は嬉しいに決まっている。
でも祝ってくれるファンは王子様としてのボクを祝ってるわけで。
素のボクを、等身大のボクを祝って欲しいんだ。
…なんて、ファンの子たちには言えないけど。
それはボクのワガママだって分かってるから。
何となく腑に落ちないまま、ボクは着替えを始めた。





誕生日など関係なく、仕事は山ほどあった。
プロデューサーはせっかくの誕生日なのにすまない、と謝ったけどボクは笑って許した。
そんなのプロデューサーのせいじゃないから。
朝に取材、昼のダンスレッスンのあとに営業。
いつものように時間は進んでいく。
そっちの方がいいような気がした。


「真、今日もお疲れ」
「あ、はいプロデューサー」
営業が終わって、ボクはプロデューサーからねぎらいの言葉をかけてもらった。
明日の予定を確認しているところで、タクシーが事務所の前に停まった。
疲れた身体で事務所の階段を上る。
家に帰っても夜遅いし、ケーキを食べて終わりだろうな。
ため息をつきながらドアを開けると


『ハッピーバースデイ真〜!!!』


盛大な掛け声とともに、何かがパンパンと破裂する音がした。
目の前にはてやったり9人分の笑顔があった。
「な…あ…?」
状況がよく飲み込めないボクを見て、亜美と真美が笑っている。
「あははっ!やっぱりまこちんビックリしてるよ〜」
「作戦は大成功だったようですな→」
「さ、作戦って、もしかして皆ボクに内緒でこんなことを計画してたの?」
うん、と頷いてからお茶目に舌を出す春香。
「ごめんね〜黙ってて。でもこういうのってサプライズじゃないと楽しくないでしょ?」
「私は騙すのは良くないと言ったのだけど…」
千早がフォローするように口を挟む。
雪歩と美希が横から顔を出して付け加えた。
「真ちゃん最近元気ないから、皆で励まそうと思って…」
「全員で準備とかしたんだよ☆」
まだ開いた口が塞がらなかった。
ボクも皆の誕生日は覚えていたけど、せいぜいプレゼントを貰うくらいかなと思っていたのに。


「何ぽかんとしてるのよ。ほら、主役なんだから早く座りなさい」
伊織に引っ張られてソファの真ん中に座らされた。
「うっう〜!それじゃあ私はケーキを運んできますー」
やよいがぴょんぴょんと跳ねるように給湯室に向かう。
ボクはまたビックリして隣にいる律子に聞いた。
「ケ、ケーキまであるの?」
「そうよ。まあ普通に料理ができる人にしか頼まなかったけど」
美希とか伊織に任せたら大変なことになるからね、と笑う。
やがてやよいが運んできたケーキは、お店に並んでもおかしくないほどの立派なホールケーキだった。
たっぷりの生クリームにイチゴが飾り付けられ、真ん中には『真お誕生日おめでとう』と書いてある。
涙もろくはないボクもこれには感動した。
「ボクの為にこんな豪華なケーキ作ってくれたの!?」
あずささんと春香が顔を合わせて笑った。
「そうよ〜。私と春香ちゃんが作ったの」
「時間なかったからそれが精一杯だったんだけど」
「そんなことないよ!充分すぎるって!」
ボクの口調は興奮気味になっていた。
ケーキもそうだが、皆の心遣いが胸に広がっていく。


どうして素の自分が出せないなんて思ったんだろう。
周りにはこんなに素敵な仲間がいるのに。
この人たちと一緒なら、ボクは本来のボクのままでいられる。
「…皆ありがとう」
「何言ってるの、私たち仲間じゃない!」
「そうよ、水臭いこと言わないで」
顔を上げると、一人一人の笑顔が瞳に焼きつけられる。
いい所だなと思う。
765プロはただの芸能事務所じゃない。
ボクにとっては、大好きな友達といられる場所。
笑って、大きく頷いた。
「そう、だよね!」





その後、全員でケーキを分けあって、騒いだ。
勿論プレゼントも貰った。
プレゼント以上に嬉しかった、皆の気持ち。
皆の誕生日には、倍返ししないとなと心に決めた。


夜になって眠りにつくまで、ボクの心は温かかった。











何となく百合なしにしてみました。
最近はまこネコ(勝手に略してみました)であずささんと真との絡みばかり書いてたからかもしれません。
たまには息抜きに、と。
誕生日ですし無難にいきたいですね。
ほのぼのな雰囲気が出たでしょうか?
真、誕生日おめでとう☆