真がネコになった日②

①の続きになります。
さて、どれくらい続くんでしょうか?w







真がネコになったという事実は受け入れがたくても現実に起こっていることなので誰もが納得するしかなかった。
不幸中の幸いは、真はまだデビューをしていないアイドル候補生だということと、今の時期は夏休みだということだ。
8月中には元に戻さなければ大変なことになる。


その後、真の両親が事務所まで迎えに着た。
驚いているようだったが事情を受け入れているところを見て、小鳥や律子はさすが真の両親だと感心したとかしないとか。
ネコ耳姿の真は気まぐれなネコの如くなすがままだった。
嫌がりもしないが、両親を見ても何も反応をしない。
小鳥と真の父親が何やら話をしているのを、ある者は心配そうに、ある者は面白半分に見ていた。
「(真ちゃん…)」
第一発見者であるあずさは勿論前者である。
両親に連れられて事務所を出ていくのをじっと見ていた。
真は眠そうに欠伸をしている。
不意に、真の定まらない視線があずさに留まった
「(――え?)」
――ような気がした。


一瞬の後ぷいっと視線を逸らす。
「…気のせい、よねえ」
「何が気のせいなの?あずさお姉ちゃん」
隣にいた真美が不思議そうに聞いてくる。
声に出ていたらしい。
「ううん、何でもないわ」






家に帰ってふうとため息をつく。
今日一日溜まっていた息を吐き出したようだった。
窓の外からざあっと音がする。
雨が降ってきたのだろう。


ソファでテレビを見ていると、段々気持ちが落ち着いてきた。
真があんな状態になった理由は分からないがきっと何とかなる気がする。
だって765プロには皆がいるから。
みんなと一緒にいたらきっと真は元に戻ってくれる。
根拠もないのにそんなことを思っていた。
「(考え事してたらのどが乾いちゃった)」
立ち上がって冷蔵庫に向かう。
ガパッと音を立ててドアが開く。
「…あら〜?」
しかし、目当てのミネラルウォーターが見当たらない。
そういえば今朝に切れて仕事帰りに買おうと思っていたのだ。
今日はドタバタしていて疲れきっていたのですっかり忘れていた。
コンビニで買ってこなければ。




ドアを開けようとしたら、外に気配を感じた。
来客だろうか。
しかし用があるならインターホンを押すはずだ。
不審者かと考えて怖くなる。
恐る恐るドアを開けていく。
ドアの隙間からあずさが見たものは
「…真ちゃん!」
全身を濡らし、ぐったりとうずくまる真だった。



「はい、ええ…分かりました。では」
事務所にいる小鳥との会話を終え、受話器を置く。
どうやら真は自分の意志で家を抜け出し、あずさのところまで来たようだ。
真が家にいないと両親から連絡があったのが30分前。
小鳥が慌ただしく行方を追っていたところ、あずさからの連絡が入ってきた。
結局、今夜は真を預かることになった。


寝室のドアをそっと開ける。
ベッドに熱からか顔を赤くした真が横たわっている。
昼の掴みどころのない表情も消え、苦しそうだ。
額に手を当ててみると熱が移ってきた。
あずさには、何故真がここに来たのか分からない。
でもここにいる以上彼女を守ってあげなければ、という使命感が湧いてきた。
すると、真の重い瞼が揺らいだ。
スローモーションのような速度で目が開いていく。
「真ちゃん…大丈夫?」
応えるようにネコ耳が上下した。
すっと華奢な手が伸び、あずさの腕を掴む。
「あ、あらあら〜?」
そのままベッドに腕が引っ張り込まれた。
真はまた目を閉じてしまう。
まだ顔は赤いが、幾分楽そうにも見える。
あずさは思わず苦笑してしまった。
幼い子供を相手にしている気分だ。
4歳年下の女の子の寝顔は、いつもより可愛く見えた。




腕を引き込まれたまま、あずさはじっと真の寝顔を見つめていた。










とりあえず2話目です。
真一言も喋ってないですね…。
次はいっぱい喋らせます。(といっても鳴き声だけでしょうが
気づいたらあずまこになってきました。
このままこの二人で続けるべきですかね。。
次はネコ真の世話をするあずささんの回、です。