渡したくない、渡せない

いおまこです。
単に2人がイチャイチャしてるだけの話の気が…。








「伊織ってさー、ホントに可愛いよねー」
伊織は思わずオレンジジュースを噴きかけた。
慌てて手で押さえたがてのひらが汚れてしまった。
後で処理しなければ。
「…何言ってんのよあんた」
本人の目の前で、しかも至ってバカ真面目な顔で。
「いや、伊織って顔立ち綺麗で声高くて可愛い衣装似合ってさ。ボクもそんな風になりたいなって」
テーブルに頬杖をつきながら少し不満げに漏らす。
伊織はさっきの動揺を表に出さないように注意しながら、いつもの調子で返した。
「ふんっ、そんなの当たり前じゃない」
「…ちょっとは謙遜も覚えなよ」
そこは見習いたくないなあ、と真が苦笑する。
伊織はそういう顔もなかなかいいのに、と秘かに思った。


「大体真が綺麗で可愛い声出して女の子らしい衣装着てるところなんて、今更想像できないわ」
もう一度オレンジジュースに手を伸ばしながら伊織が言う。
「うう、そうだよね…。みんな男装してもちゃんと可愛く見えるし…」
ずううううん、という効果音が聞こえてきそうな勢いで真の周りの空気が沈む。
真が男の子っぽいことを気にしているのは分かっているが、こうみるとかなりのコンプレックスのようだ。
そんなに気にすることなのだろうか。
「まあ、真の男の子っぽさは個性でしょ。そんなに気にすることないんじゃない?」
「そうなんだけどさー。あーあ、ホント伊織が羨ましい…えいっ!!」
言うなり、伊織に覆いかぶさるように抱きついた。
「!?きゃあああああっ!!」
反射的に声を上げてしまった。
この休憩室に他に人がいなくて助かった。
真は伊織の髪に鼻を寄せてスンスンと香りをかぐ。
「伊織っていい匂いだよね〜」
「気持ち悪いこと言わないでよ」
伊織が毒を吐くと真はまた苦笑する。


そして、少しだけ寂しそうに呟いた。
「ボクが持ってない女の子の要素、全部持ってる」
伊織の心がチクリと痛んだ。
真だって好きで女の子に好かれてるわけではないのだ。
某曲の歌詞を借りると「恋を夢見るお姫様」なわけで。
「…何言ってるのよ。あんただってちゃんと女の子の部分持ってるわよ」
「え?」
「私は知ってる。真の可愛い部分…」
自分でも何を言っているのかと思う。
こんなに恥ずかしいことをいうのは自分のキャラに合っていない。
真は顔を染めながら、きゅっと強く抱きしめた。
「伊織、ありがと」
「ふん」






好きな理由なんて、山ほどあるもの












たまにはいいよねと思いつきで甘くしてみました。
そしたら必要以上に甘くなりましたw
伊織のツン成分が足りませんね。
ケンカさせないとなるとどうしてもデレが多めになってしまいます。
ツンデレ黄金比は8:2!(by801ちゃん
それは好きな人でも友達でも変わらないと思うんです。
そんな伊織が可愛いのですよ。