ねえ、こっちを見て

最近真受け話を書いていない気がしたので。
真←美希なみきまこです。







恋は心の病、とは誰の言葉だっただろうか。
実に的を射ていると思うのだ。
本当に病気にかかっているように思えるから。
あのヒトを見ているだけで
身体が火照って動悸がして、頭がくらくらするのだ。
ああ、この気持ちは紛れもなく恋なのだ。
認めるのが怖かった。
でも認めるしかなかった。
大好きだから…
ねえ、真クン?



その日は気温が30度を優に超えていた。
セミの鳴く声がうるさく、体感温度を上げていく。
「うう、暑いの〜」
声に出すと横でアイスを食べていた春香がこっちを見た。
「ホントだよね〜。仕事がオフのコで出かけようっていったって、こう暑いと気が滅入るよ」
アイスが溶けて雫になりそうなのを手のひらで受け止める。
美希はうんうんと相槌を打つ。
待ち合わせの場所を駅前にしたのも悪かった。
せめてクーラーのある屋内だったら…。
「お〜い!春香、美希〜」
明らかに自分たちに向けて向けられた声に美希は体が跳ね上がりそうになった。
交差点の向こうから真が駆け寄ってきた。
美希たちと顔を合わせると両手を合わせて謝罪の意を示した。
「ごめん、ちょっと遅れちゃった」
「ううんいいよ。遅れたっていっても2分だけだし」
春香が笑って言う。
「(春香はいいなあ…。ミキなんて目も合わせられないのに)」
ちょっぴり羨ましくて、ちょっぴりヤキモチ。
目は合わせられないが真の体や服装をチェックしてみた。
やはり彼女も額や腕に汗を光らせている。
首や二の腕がキラキラと光るのを見ていると、顔が熱くなる。
何だか官能的なのだ(尤も美希自身が官能的と言う言葉を知っているかどうかだが
「春香だけアイス食べてずるいよ」
「じゃあみんなで買いに行こうよ。ねえ美希?」
「あ、うん。そうだね」
ぼうっとしていた美希は二人の話をよく聞いていなかったが、とりあえず相槌を打っておいた。
並んで歩いていく二人の後を慌てて追う。




「ふう〜」
夕方、家に帰った美希はベッドに突っ伏した。
今日は仕事のある日より疲れた気がする。
目を合わせられないのに、真の表情や仕草はありありと脳裏に焼き付いている。
アイスを食べてご機嫌な顔。
春香に冷やかされて慌てた顔。
可愛いアクセサリを見つけて嬉しそうな顔。
全部大好きだ。
できることはなら自分だけに見せてほしいと思うほどに。
「(無理、だよね…)」


マクラに顔をうずめながら真の姿を思い浮かべる。
今何をしてるの?
どんなことを考えてるの?
知りたい。
知りたいならメールで聞けばいいのだが、それはダメな気がした。
ああもう。
考えすぎて頭が痛い。
でも何も考えられない。
「真クンのこと、一番好きなのはミキなの」





眠気でまどろんでいく意識の中で、美希は幸福感を感じていた。












何か私の書く美希は片思いが多いですね。
たまにはくっつく美希を書いてみようかな…。
真は恋心とかすっごく鈍感だと思うんですよね。
自分は乙女心の持主なのにw
美希はそんな真に気づいてほしいんです。
でも自分で言い出すのは少し怖いと。
そんな繊細な恋心なのです。