ここにあなたがいることに。

7/19はあずささんの誕生日ですよっ!
おめでとうございますw
あずちは話でお祝いしようと思います。








「「「あずささんっお誕生日おめでとうございま〜す!!」」」
みんなのお祝いの言葉とともに、クラッカーが弾ける。
パパパパンと小気味よい音がした。
「うふふ、みんなありがとう〜」
いつものおっとりした調子で、でも声と表情に嬉しさを滲ませるあずさ。
春香がケーキを頬張りながら照れたように笑う。
「えへへっこっそり準備していた甲斐がありました!」
「まあでも今日が誕生日だって言われて『あらそうなの〜?』って返すのもどうかと思いますけどね」
律子のツッコミに笑い声が起きる。
あずさは思い出して恥ずかしさに顔を赤くした。
しかし知らなかったのは事実だ。
ここ最近は新曲の収録にラジオと日付など確認している暇がなかった。
だんだん近づいているのは分かっていたが今日だったとは。
それにしても、事務所のみんなが自分の田院常備を知っていてくれたことにビックリした。
なので今日事務所に来てみんなに「今日お誕生日ですよね、おめでとうございます!」と言われた時はうっかり涙が出そうになった。
涙もろいとこういう時に苦労する。



その後それぞれがプレゼントを贈り、気が抜けたのかケーキを食べながら騒ぎ出す。
あずさはその様子を微笑ましそうに見ながらプレゼントを確認する。
春香からは手作りだという綺麗に包装されたクッキー。
美希からは「ミキとお揃いなの!」とおにぎりのストラップ。
真からは女の子らしいオープンハートのネックレス。
雪歩からは厳選したという緑茶のパック。
やよいからは小さなカエルのぬいぐるみ。
伊織からはブランド物らしい真っ白のポーチ。
亜美真美からは目の部分に落書きがされたアイマスク。
律子からは忘れ物などないようにとメモ帳とペン。
小鳥からは二十歳になった記念の安物のワイン。



ふとあずさは気付いた。
「(千早ちゃんからのプレゼントがない?)」
千早のほうを窺うと、春香と美希のケンカに似たやりとりをおかしそうに見ている。
…忘れられたのだろうか。
いや、そんな筈はない。
春香によるとこのパーティはみんなで相談して決めたものらしい。
そうならば千早が自分の誕生日を忘れてプレゼントを買い忘れたということはないだろう。
それに、
「(私なら、恋人の誕生日プレゼントを忘れるなんてことしないもの)」
そう、あずさと千早は付き合っている。
一応事務所には秘密なのだが、年頃の女の子ばかりなのでもう気付かれているかもしれない。


忘れたわけではないとしたら何故だろうか。
「(もしかして、嫌われたのかしら)」
さっきから視線を送っているのだが気づいていないのかこちらを向いてくれない。
意図的に無視しているのかもしれない。
あずさはここ最近の自分の行動を思い出してみるが、千早を不愉快にさせるようなことをした覚えはない。
それとも自分自身がそう思っているだけで千早には傷つける何かをしただろうか。
しかしそんなことを考えても思考は同じところをぐるぐる回るだけでいたちごっこだった。




数時間後
騒ぎ疲れたのか年少組がソファで眠り出したのをきっかけに、『そろそろお開きにしよーか』ということになった。
途中から誕生日とか関係なくなったとかいうのはきっと気のせいだ。
少し気持ちが沈んだまま、あずさも帰り支度を始めた。
するとトントンと肩を叩かれた感覚がした。
振り返ると、申し訳なさそうな顔で千早が立っている。
「あの、あずささん…外で話せますか?」
何故かその瞳が憂いを帯びているように見えて不安になる。
それを表に出さないように気をつけながらあずさはにっこりと微笑む。
「ええ、いいわよ」



事務所の裏に出る。
季節はもうすっかり夏だが、夜風は爽やかに頬を撫でていく。
夏本番まではまだ時間がありそうだ。
「千早ちゃん…話ってなあに?」
あくまでさり気なく問いかける。
良くない予想は考えないようにする。
「さっきは…渡せませんでしたけど、その…誕生日プレゼントを」
あずさは驚くと同時に安堵した。
嫌われたわけではなかったのだ。
でも
「どうしてさっきの交換タイムの時に渡さなかったの?」
千早を責めているわけではない。
ただ、少し気になっただけ。
「…これを、人前で渡すのはちょっと…」
言い淀みながら千早はバッグの底を探る。
そっと取り出したのは、手に乗る程度の小さな箱。
どうやら上にあげるタイプのようだ。
あずさの胸にある予感がよぎる。
それは女性ならば受け取って喜ばないはずのない、究極のプレゼント。
千早は少し顔を赤らめながら、その箱をゆっくりとあずさの手に載せる。
「開けてみてください」
高鳴る胸を落ち着かせながら、蓋を開けてゆく。


銀色にきらめく、小さなリングがあった。


やはりという思いとどうしてという混乱で、言葉を出せずに千早を見た。
千早も歯がゆそうにこちらを見ている。
「千早、ちゃん…」
見る見るうちにあずさの視界が滲む。
それがどんな感情で出たものなのか、あずさ本人にもよく分からなかった。
慌てたのは千早だ。
普段の冷静な態度は崩れ、あたふたと右往左往する。
「あ、あずささん!?やっやっぱりダメでしたか?あのその…泣かないで…」
クールな千早の見せる歳相応の表情、行動。
あずさは千早のそんな人間臭さが、愛しくて堪らない。
気づけば泣きながら笑っていた。
千早の顔が驚いたせいなのかきょとんとしたものになる。
それがまたおかしくて、今度はクスクスと声が漏れた。


それから、顔を上げて千早を見つめる。
千早の細い体をふわりと柔らかいものが包んだ。
あずさの腕だ。
「ありがとう、ありがとうね…千早ちゃん」
途端に恥ずかしくなったのか千早が早口にまくしたてる。
「あああの、別に婚約指輪とかじゃなくて、あ、あずささんは大人なのでネックレスとかはもう持っていると思ってですね、ええっと…」
「うふふ、分かってるわ」
恥ずかしがり屋の千早だから、いきなりそんな大胆なことはできないだろう。
でも、どんな意味があろうとも、純粋に嬉しい。



最初のうちはジタバタしていた千早だが、あずさの腕に抱かれている間に落ち着いてきたのか、ぽつりと呟いた。
「あすささんとは…ずっとずっと、一緒にいたいですから…」
あずさに身を委ねるように抱きつく。
彼女特有の優しい匂いがした。
「千早ちゃん、私今、凄く幸せよ…」
千早を抱きしめる腕に力がこもる。
彼女が苦しくないように気をつけながら。
「あずささん、お誕生日、おめでとうございます」
「ありがとう」
次の言葉を言おうかためらい、しかし決心して口を開く。
「生まれてきてくれて、ありがとうございます」
あずさは驚いて腕の中の千早を見た。
照れくさそうに顔をそらしてこちらを見てくれない。
耳を赤くしているから、どんな表情をしているのかは手に取るように分かるが。
千早の頬に触れると、ぴくりと反応する。
少し顔を上向かせ、ゆっくりと顔を近づけていく。
まだ少し顔が強張っているがそっと目を閉じた。
二人の唇が合わさる。
お互いがお互いの体温を感じていた。



どれほど経っただろうか。
あずさが少しだけ顔を後退させた。
千早は自分の顔が火照っているのが分かった。
短かったのか長かったのかも分からない。
「今日はね、今までで一番…幸せな誕生日よ」
「それは良かったです」
千早がにこりと笑った。
満面の笑みというわけではなかったが、あずさにはそれで充分だった。
二人で寄り添って、夏の風を感じる。






「あずささんのご両親に、感謝しなくてはいけませんね」
「あら、それはいつか挨拶に行くということかしら〜?」
「なっ…べ別に…」
「ふふ、冗談よ」














何とか頑張って仕上げてみました。
まさか誕生日以降にあげるわけにもいかないですものね。
あずささんってコミュ見てる限り結構涙もろいのかなと思って、こんなテイストになりました。
好きな人と一緒にいるだけで特別な日…ってありふれた考えですけど、当たってると思います。
だから千早とイチャつかせてみましたw
最近あずまこよりもあずちはの方が好きになってる気がします。
成長した気がします!(それは間違いなく気のせい
おおう、話がずれてしまいました;
改めまして、あずささんお誕生日おめでとうございます!