吐息のぬくもり

いおまこで書いてみます。
こう見ると私って本当に浮気性だなあ…w








さっきから違和感はあったのだ。
眠っている間も、ずっと圧迫感があった。
そして今伊織はその理由を理解した。
が、
「(この状況はどういうことなのよ…!)」
そうなった経緯が全くもって分からない。


分かりやすく説明すると、伊織が寝ていたベッドにいつの間にか真が潜り込んできて、更に伊織を抱き枕代わりにするかのように後ろから抱きしめている。
解こうにもしっかり体を密着されているので身動きが取れず、どうすることもできない。
首筋には真の規則正しい吐息がかかり、胸からはかすかに鼓動が伝わってくる。
伊織の頭の中はパンク寸前だった。


真と伊織のデュオは新曲のPVロケのためにあるリゾートに来ていた。
ホテルに泊まるのだが都合上1部屋しか取れないとプロデューサーに言われた。
伊織は反論しようとしたが真が二つ返事でOKしたので黙るしかなかった。
しかしまさかこんなことになろうとは。


「(落ち着け…とりあえず落ち着くのよ私…)」
すーはーと深呼吸を繰り返す。
まずここから脱出する方法はないかと考えてみる。
前述したとおり、身体はしっかりと拘束されており抜けるのは困難。
いざとなれば無理やりにでも解けるのだが、そんなことをすれば確実に真が起きてしまう。
きっと真は昨日のPV撮影で疲れきっているのだろう。
強引に起こすのは何となく気が引ける。
「(って、何で私、真にだけ甘いのかしら)」
自分でも疑問に思いつつ、この方法は却下する。
となるともうひとつの方法。
『真が起きるまでこのままの状態でいる』こと。
それはそれでキツイだろう、精神的に。
だが伊織には何故かこれに抵抗はなかった。
幸いベッドサイドの時計のアラームを7:00にセットしている。
現在時刻は6:45。
後15分の辛抱だ。
アラームが鳴ったら、真の意識がはっきりしないうちに急いで離れれば何とかなるだろう。
そう思って伊織は決意を固めた。


「(10分は経ったかしら…)」
恐ろしく遅いようで、恐ろしく早く、時間は過ぎていく。
抱きしめる腕は温かく優しい。
後ろ向きのため顔は見られないがきっと綺麗な寝顔なのだろう。
「(な、何考えてるのよ私!)」
このままでもいいかもしれないと危うく思ってしまう。
時計を横目で見ると6:56を指していた。
あと4分。
この様子だと何事もなく起きられそうだとホッとする。
すると
「ふう…ぅん…」
真の口から、溜息のような息が漏れる。
その柔らかな息が伊織の耳を直撃した。
ぞわぞわっと背中に鳥肌が立つ。
しかしそれは決して不快なものではなかった。
もぞもぞと真が身体を動かす。
そろそろ目を覚ますのだろうか。
早く起きてほしいような…もう少しだけこのままでいたいような…。


「んん〜…おはよ……っうわあ!?な、何で伊織が!!?」
眼を開けた瞬間素晴らしい反射神経でベッドから飛び降りた真。
「それはこっちの台詞よバカ!目が覚めたらあんたが私のベッドに入って抱き枕にしてたのよ!!」
驚く真に反論しながら、伊織の頭の中は解放感と寂しさでぐちゃぐちゃになっていた。
呆気に取られている真の顔を見ながら、真っ赤になっているのは怒りのせいだと思ってくれるようにと祈る。
案の定相手は怒っていると取ったのかいつもの元気をなくしうなだれている。
「ご、ごめん。ボク実は小さい頃からぬいぐるみ抱いて寝るのが癖でさ…。まさかこんな形で出るとは思わなかったから…ごめん」
すっかり意気消沈する真を見て、伊織はため息をついた。
「…もういいわよ。次からはこんなことしないでよね」
「え?許してくれるの?」
返事の代わりにフンと鼻を鳴らす。
真の顔が安堵の笑顔になった。
それを見て伊織の脳裏に彼女の寝息や鼓動が蘇ってきて、また顔が赤くなる。
「(もしかして私、真のことが好きなのかしら?)」
ふと思って、すぐに考えを否定する。
あり得ない、自分も彼女も女性だ。
しかし別に嫌ってはいないと思う。
「伊織、どうかしたの?」
まだ寝癖のついた髪の毛を揺らして真が尋ねる。
「何でもないわよ。今日もさっさと撮影終わせましょ」
「勿論!」








「(どうかこの気持ちが本当になりませんように…)」













いおまこ初挑戦作です。
ありきたりなネタですいません;
私がこのCPにはまったのは某ニコマスプロデューサーの影響です。
ケンカするほど仲がいいって素晴らしいですよね^^
私が書くとケンカっぽくなくなりますが。
この二人はしばらくの間自分の恋心に気づかないと思うんです。
でも相手のことを無意識に目で追ったり、何気ないしぐさにドキッとし始めて段々自覚するように…
何て青臭い!だがそれがいい!!
次は非百合作品を書こうかと思っております。